メンテナンスと愛着の関係

店長エンゾーです。

僕が長いこと愛用しているレンズの一つに、「NOKTON CLASSIC 35mmF1.4」というレンズがあります。コシナが、フォクトレンダーというブランド名で製造した、ベッサとライカのためのレンズです。そのフォルムは本家ライカの初代Summilux 35mmF1.4をモチーフにしており、とてもコンパクト。癖が強い描写でじゃじゃ馬として知られるSummiluxに対し、NOKTONは開放からきっちり写る優等生ぶりで、とても使いやすいレンズでした。

しかし、この手のレンジファインダー用レンズは、基本的にノーメンテでは長持ちしません。数年に一度、オーバーホールが必要になるというデリケートな一面を持っています。ご多分に漏れず、エンゾーのNOKTONも長年酷使してきた結果、ヘリコイドグリスがだいぶ抜けてしまい、指でフォーカシングレバーを押すとカタカタ音がするくらい、鏡筒のガタも大きくなっていました。どう見ても光軸がずれているわけですが、そんなレンズを見ながら「これでは本来の写りにはならないだろうな」などと考え始めると寂しい気持ちになってしまい、自然と使わなくなって行きました。

そこで先日、ようやく重い腰を上げて、メンテナンスに出すことにしました。実はこのレンズの発売後しばらくして、結構個体差があることが分かり、ネット上では「ハズレ玉は鏡筒にガタがある」と書かれていました。自分のNOKTONはハズレだったかもしれないという、少し残念な気持ちも、愛着の減少の一因になっていたことは否めません。果たして、今回のオーバーホールでどこまで回復するのか?

約1ヶ月後、NOKTONが手元に返ってきました。馴染みのカメラ屋さんの店頭で梱包を解いてもらい、出てきたレンズのピントリングを回してみます。
グリスアップされたばかりのレンズに特有の、「ぬるり」とした少し重めの、心地良い抵抗感。恐る恐る鏡筒をつまんで上下左右に力をかけてみましたが、ガタは微塵もありません。完璧に調整されて戻ってきたようです。

その後、何が起こったか?
再び定位置のライカに装着されたNOKTON CLASSIC 35mmF1.4は、劇的に出番が増えました。もともとライカのメインレンズとして活躍していたレンズなので、ライカそのものを持ち出す機会も増えました。
メンテナンスと愛着には、密接な関係があったわけです。
大切なものに、きちんと手をかける。あたりまえのことと言ってしまえばそれまでですが、そんな「アタリマエ」が、モノと長く付き合う秘訣だということを再確認した出来事でした。

ところで、ユリシーズではよく、お客様から次のようなお問い合わせを戴くことがあります。

「このストラップは、どのようにメンテナンスしていけばいいですか?ミンクオイルなどを塗り込めばいいのでしょうか」

ユリシーズは創業以来一貫して、ベジタブルタンニンなめしのイタリアンレザー「プエブロ」をメインに使用してきました。この革は、豊富に油分を含んでいるので、後からクリームなどで加脂する必要がほとんどありません。なので、上のようなご質問に対しても、メンテナンスフリーなので大丈夫ですよとお応えしてきました。
しかし、使い込むどに味わいが増すのがベジタンの革の特徴であるとは言え、やはりそれ相応に傷みも出てきます。例えばそれが一番顕著に現れるのが、革の切断面、いわゆる「コバ」と言われる部分です。

もし、メンテナンスをすることで今以上に愛着を持ってストラップと長くお付き合いしていただけるなら・・・。そう考えた時、この6年間まったく思い至らなかった「メンテナンスのための道具」をオリジナルで作ってみてはどうか、というアイデアを思いつきました。どのようなメンテナンスキットになるのか?現在、思案中です。


(Leica M type 240 NOKTON CLASSIC 35mmF1.4 MC )

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