【エンゾーのモノ語り】4. LED版ストームランタンの話

【エンゾーのモノ語り】4. LED版ストームランタンの話

【LED版ストームランタンの話】

たとえアウトドア好きではなくても、形だけなら誰でもどこかで見たことがあるアンティークなランプ。それがストームランタンだ。

ストームランタン(もしくはハリケーンランタン)と言えば、アメリカのDietz(デイツ)とドイツのFEUERHAND(フュアーハンド)が東西の両横綱だが、その一方の雄であるフュアーハンドが、ブランドを代表するモデル「276ベイビースペシャル」をベースに作ったバッテリー駆動のLEDランタン「276ベイビースペシャルLED」を、今回購入することにした。

何しろ本家が作っているわけだから、ガワは模造品ではなく、オイルランタンの中身を電源仕様にモディファイしただけの、正真正銘「ホンモノ」だ。


専用設計のフィラメントLEDは、炎のように揺らめきこそしないものの、灯芯に限りなく近い雰囲気を再現してあるし、オイル注入口のキャップは、形状や「つまんで回す」という動作はそのままに、役割だけ光量の調整ダイヤルに変わっている。伝統的なデザインを極力残しているところが心にくい。


とはいえ、ノスタルジーしか取り柄がないかというと、そんなことはない。従来のストームランタンが、あくまでもムード番長であって実用性が低いのはお約束であったのに対し、このLED版は、照度を最大にすると直視できないほど明るくなり、小さなテントなら1灯で十分カバーできる光量を発揮する。
何より、燃料を燃やさないから一酸化炭素中毒や火災の心配がなく、幕内の好きなところに置いてニヤニヤできるのが嬉しいポイントだ。

しかし、購入を決定づけた最後の一押しは「交換可能な充電池を採用している」という点だった。
単三電池3本、もしくは18650型リチウムイオン電池2本のデュアル仕様で、単三使用時は1.5時間~156時間だが、18650型リチウムイオン電池使用時なら14.5時間~432時間というロングバッテリーライフぶりを誇る(パススルー充電はできない)。

ちなみに、カラーバリエーションも豊富なフュアーハンドのランタンには、オプションとして本体と同色のリフレクター(ランプシェード)が用意されているが、表面と裏面が同じ色で塗装されているため、使用すると光色が変わってしまったり、ダークカラーの場合は光そのものを吸収してしまったりするという欠点がある。

そのなかで唯一、亜鉛メッキを施したジンク(=シルバー色)のリフレクターだけは、温かなLEDの色をそのまま反射・集光してくれるので、見栄えのエモさが5割増しになるだけでなく、下方への集光率がUPし実用性がさらに向上する。
そういうわけで、個人的なオススメはジンクになる。

唯一の欠点は値段の高さか。従来のオイル版なら3500円で買えてしまうところ、その3倍を超える価格に、やや怯んでしまうのは確かだ。
だが、高い実用性と癒やされる姿の美しさを考えれば、一生遊べる大人のランタンとして、文句なくお勧めできる一品だ。

最後に。
あくまでも好みの問題だが、この製品を「過去の遺産を形だけ真似ただけの、凡百のレプリカのひとつ」と切り捨てるのは、いささかもったいない気がする。
世の中には、バッテリー組み込み式で交換ができない家電製品が、山のようにある。外側はなんともないのに、ただバッテリーの性能が低下したというだけの理由で、丸ごと捨てられる家電のなんと多いことか。

その点、この276LEDは「灯芯を取り替えオイルを補充すればずっと使える」というコンセプトが、そのまま現代の技術に最小限置き換わっただけだ。愛着を持って長く付き合える道具である点において、フュアーハンドの精神は、何も変わっていない。

【エンゾーのモノ語り】気まぐれ更新中

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