カメラバッグ開発記(その2)

僕が何年も前からカメラバッグを作りたかった理由はいくつかあります。

1.化学繊維がメインの素材として使われているバッグに、どうしても愛着を持てなかった。
  (使い込んで「味が出る」のか「単にボロくなる」のかは、素材で決まると思っているので)

2.カメラバッグは「カメラとレンズにやさしいバッグ」であって、ユーザーにはそれほど優しくない。
  (やたらと奥行きがあるせいで、身体に寄り添わず、あちこちにぶつけてしまったりして、気を遣う)

3.カメラを入れなくても、日常生活で普段使いしたくなるデザインのバッグがない。
  (良くも悪くも、ひと目でカメラバッグと分かる外観が、洋服とコーディネートしずらい)

4.ワンショルダーで、速写性の高いカメラバッグが欲しい。
  (ほとんどのバッグは機材の保護が優先されており、秒単位で頻繁に出し入れすることは考慮されていない)

5.背負って全力で走れるカメラバッグが欲しい。
  (ただし、バックパック型ではなく、あくまでもショルダー型で)

6.疲れにくいカメラバッグが欲しい。
  (従来型のカメラバッグは、重心位置が身体の重心から離れているため、より重く感じるので疲労が溜まりやすい)

7.レンズ交換の時に両手が使える仕組みが欲しい。
  (路上でレンズ交換するときに、片手が蓋を開けておくことで塞がるのは嫌)

他にも挙げていけばきりがないのですが、日常でも旅先でも、路上でスナップばかり撮っていた僕にとっては、上のような条件を満たしてくれるものが、一番欲しいカメラバッグのカタチだったのでした。

最初に本気で作ろうと思ったのは、2006年1月。末期とはいえ、まだまだフィルムカメラ全盛の時代です。自分の後ろ姿をトレースで書き起こしたイラストにバッグを背負わせ、ざっくりした構想を書き込みました。
それを、雑誌やHPなどで見つけておいたバッグ製作工房に片っ端からFAXで送り、次いで電話で製作可能かどうか確認をとります。

しかし、HPには「カスタマイズ受け付けます」と書いてあるのに、返ってくるのはつれない返事ばかり。今ならその無謀なチャレンジに苦笑いしてしまうような話ですが、当時、ワンオフで希望通りの(しかも形が一般的なものからかけ離れた)バッグを作ってくれるような工房など殆ど無いことを、知る由もありませんでした。

バッグというものは、基本的に、完成形からの「逆算」で設計されます。

「こういう形にするためには、どういう順序で組み立てていけばいいか」
「そのためには、どういうパーツが必要になるか」
こんな感じで、詰将棋のように、一手一手さかのぼっていくわけです。だから、少し形状が複雑になっただけで、とたんに設計が難しくなります。それはまるで、難解なパズルそのものです。

素人が書いたイラストを気軽に渡されても、その完成図になるための手順を考える作業は、すべて職人さんの頭脳に任されるわけですから、たった一個のバッグを作るためだけに時間と労力をかけることがいかに非効率かは、バッグの製作工程を少しでも知れば、すぐに分かります。
ただ、その「工程の複雑さと非効率さ」を簡単に説明するのが難しいので、結果的に職人さんは手っ取り早く労働対価に置き換えて

「それを実際にやるとなると、こちらもこれくらい頂かないと合いませんよ」

と提案することになり、素人である僕は

「ええええっ!?そんなに掛かるんですか?」

と驚いて、立ち止まってしまうことになるのでした。

こうして、いったん「理想のバッグ作り」はお蔵入りになります。(つづく)
 
 

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